電線を支える支持物の強度は、風圧荷重、架渉線やがいし装置の重量など、様々な規定によって決められます。
支持物に加わる荷重のうち、法規の計算問題で出題される風圧荷重について解説していきます。
1. 風圧荷重の種類
風圧荷重は、下記のように4種類に分けられ、地域によりその適用範囲が定められています。
・甲種風圧荷重
風速40〔m/s〕の風があるものと仮定した場合に生じる風圧荷重で、高温季について適用します。
低温季において最大風圧を生じる地方にあっては低温季についても適用します。
甲種風圧荷重は、支持物、電線その他の架渉線、がいし装置及び腕金類について、構成材の垂直投影面積1〔m²〕にかかる圧力(風圧荷重〔Pa〕)を定めています。
甲種風圧の適用地域の配電線では、電線については980〔Pa〕(100〔kg/m²〕)の風圧がかかるものとして支持物の強度を計算します。
・乙種風圧荷重
電線その他の架渉線の周囲に暑さ6〔mm〕、比重0.9の氷雪が付着した状態に対し、甲種風圧荷重の0.5倍を基礎として計算したもので、氷雪の多い地方において低温季について適用します。
・丙種風圧荷重
甲種風圧荷重の0.5倍を基礎として計算したもので、氷雪の多くない地方において低温季について適用します。
・着雪時風圧荷重
架渉線の周囲に比重0.6の雪が同心円状に付着した状態に対し、甲種風圧荷重の0.3倍を基礎として計算したもので、降雪の多い地域の河川等を横断する鉄塔に用います。
2. 風圧荷重の適用
風圧荷重の計算を適用する地方は、下の表のように適用します。

注)人家が多くなっている場所に施設される架空電線路の構成材のうち、低圧又は高圧の架空電線路の支持物及び架渉線、使用電圧35 000〔V〕以下の特別高圧架空電線路の支持物に施設する低・高圧の架空電線などには、甲種又は乙種風圧荷重に代えて丙種風圧荷重を適用することができます。これは、人家の連なる場所では風速が一般的に減衰することが知られているからです。
3. 風圧荷重の計算
では、1、2で確認したことを使って、実際に問題を解いてみましょう。
〔練習問題〕

鋼心アルミより線(ACSR)を使用する6 600〔V〕高圧架空電線路がある。この電線路の電線の風圧荷重について、「電気設備技術基準の解釈」に基づき、次の問に答えよ。なお、下記の条件に基づくものとする。
①氷雪が多く、海岸地その他の低温季に最大風圧を生じる地方で、人家が多く連なっている場所以外の場所とする。
②電線構造は図の通りであり、各素線、鋼線ともに全てが同じ直径とする。
③電線被覆の絶縁体の厚さは一様とする。
④甲種風圧荷重は980〔Pa〕、乙種風圧荷重の計算に使う氷雪の厚さは6〔mm〕とする。
(a)高温季において適用する風圧荷重(電線1条、長さ1〔m〕当たり)の値〔N〕を求めよ。
(b)低温季において適用する風圧荷重(電線1条、長さ1〔m〕当たり)の値〔N〕を求めよ。
〔解答〕
(a)

電線1〔m〕の垂直投影面積は、図aより、
〔m²〕
甲種風圧荷重は、980〔Pa〕=980〔N/m²〕より、風圧荷重は、
〔N〕
(b)

電線1〔m〕の垂直投影面積は、図bより、
〔m²〕
乙種風圧荷重は、〔N/m²〕より、風圧荷重
は、
〔N〕
低温季に適用する風圧荷重は、甲種風圧荷重と乙種風圧荷重の大きい方を採用するので、10.8〔N〕となる。
4. まとめ
風圧荷重の計算問題は、適用範囲がわかっていれば得点できます。
それぞれの適用範囲を覚えておくようにしましょう。