過渡現象と時定数に関する問題はほぼ毎年出題されています。難しい微分方程式を使わなくても、どのような現象が起こるかと、時定数の簡単な公式を覚えておけばほとんどの問題は解けます。
(1)過渡現象とは
ある定常状態から次の定常状態に移行する過程で起こる現象を過渡現象といいます。
コイルやコンデンサのある回路に直流電源を接続し、スイッチを入れたり切ったりしたとき、回路の電圧や電流は徐々に変化して次の状態に落ち着きます。
その変化の速さを表す目安となるのが時定数で、時定数が小さいほど変化は急激で、時定数が大きいほど変化は緩やかになります。
時定数は定常値の約0.63倍(或いは0.37倍)になるまでの時間で示されます。
(2)
直列回路の過渡現象
図1の 直列回路で、スイッチSを①、②に閉じたときの電流の変化を示すのが図2です。
1. 〔s〕でスイッチSを①側に閉じると、電流
は直ちに
〔A〕 にはならず、徐々に増加していき
〔s〕で
〔A〕 に落ち着く。(インダクタンス
によりコイルに逆起電力を生じるため。)
2. 次に、〔s〕でSを②側に閉じ電源を取り除いても電流 はすぐには0にはならず、徐々に減少して 0〔A〕に落ち着く。(この間にコイルに蓄えられていたエネルギーがすべて放出される。)
直列回路の時定数 は、 〔s〕で表されます。(図2で
は、
,
間の時間)
(3)
直列回路の過渡現象
図3の 直列回路で、スイッチSを①、②に閉じたときの電流の変化を示すのが図4です。
1. 〔s〕でスイッチSを①側に閉じた瞬間は、コンデンサには電荷はたまっていないので、コンデンサの端子電圧は0 〔V〕であり 〔A〕
の電流が流れる。
2. コンデンサが充電されるに従い電流は減少し、コンデンサの端子電圧が電源電圧 に等しくなった時点で充電が終わり、電流は0 〔A〕 になる。
3. 充電終了後 〔s〕でSを②側に閉じると、コンデンサに蓄えられていたエネルギーが放出されるに従い電流は減少し、放電が終わると電流は0 〔A〕 になる。(電流がマイナスになるのは放電電流が充電電流と逆向きに流れることを示している。)
直列回路の時定数
は、
〔s〕で表されます。(図4で
間の時間も同じ)
[ 練習問題 ]
図のように、抵抗
とインダクタンス
のコイルを直列に接続した回路がある。
この回路において、スイッチSを時刻 〔s〕で閉じた場合に流れる電流及び各素子の端子電圧に関する記述として、誤っているのは次のうちどれか。
(1) この回路に時定数は、 の値に比例している。
(2) の値を大きくするとこの回路の時定数は、小さくなる。
(3) スイッチSを閉じた瞬間(時刻 )のコイルの端子電圧
の大きさは、零である。
(4) 定常状態の電流は、 の値に関係しない。
(5) 抵抗 の端子電圧
の大きさは、定常状態では電源電圧
の大きさに等しくなる。
[ 解答 ]
・ 直列回路の時定数
は、
[s]である。→ (1)、(2)は正しい。
・スイッチを閉じた瞬間は、電源電圧 とコイルの端子電圧(逆起電力)
の大きさは等しいので電流が流れない。→ (3)は誤り。
・定常状態の電流 は、
[A]であり
の値に関係しない。→ (4)は正しい。
・定常状態の は、
[V]である。→ (5)は正しい。
[ 答 ] (3)
※ この問題のように、時定数 の簡単な公式と、
直列回路及び
直列回路の過渡現象についておおよそ理解しておけば解けるパターンの出題が多いです。