磁界中の電子の運動については、文章問題や計算問題での出題があります。
前回の電界中の電子の運動につづき、今回は磁界中の電子の運動について取り上げます。
(1) 電磁力とフレミングの左手の法則
磁界中におかれた直線状の導体に電流を流すと導体には電磁力が働き、その電磁力の向きはフレミングの左手の法則により決まります。
左手の親指、人さし指、中指をたがいに直角になるように開き、人さし指を磁界の方向、中指を電流の方向に向けると、親指の方向が導体(電流)に働く電磁力の方向になります。
これをフレミングの左手の法則といい、電磁力の大きさ〔N〕は、
〔N〕 …… 式① で表されます。
ただし、:磁束密度〔T〕、
:電流の大きさ〔A〕、
:導体の長さ〔m〕
(2) ローレンツ力とは
磁界中を電荷が移動すると、電荷には力が働きます。この力のことをローレンツ力といいます。電荷の移動が電流ですので、ローレンツ力は磁界中の電流に働く力である電磁力と同様で、ローレンツ力の方向も、フレミングの左手の法則により決まります。
ローレンツ力の大きさ〔N〕は、
〔N〕 …… 式② で表されます。
ただし、:磁束密度〔T〕、
:電子の電荷〔C〕、
:電子の移動速度〔m/s〕
なお、電磁力とローレンツ力は同じことなので、式①は式②に変形することができます。
電流〔A〕は、単位秒
〔s〕当たりの通過電荷量
〔C〕のことであり、
より、単位で表すと、
したがって、〔N〕 ( ただし、
〔m/s〕 )
(3) 電子の円運動
図のように磁界が紙面の裏側から表側に向かう方向(磁束密度
〔T〕)であるとき、電子
〔C〕が磁界と直角方向に紙面の下から上方向に速度
〔m/s〕で入ってきたとします。
そのとき電子にはローレンツ力〔N〕が働きます。力の方向はフレミングの左手の法則により図のように常に電子の運動方向に対して直角になります。
(ここで注意すべきは、電子の移動方向の逆向きが電流の向きです。)
その結果電子は等速円運動をすることになります。
他方、物体の等速円運動において向心力と遠心力はつり合いその力の大きさ は、
〔N〕 …… 式③ で表されます。
ただし、:物体の質量〔kg〕、
:速度〔m/s〕、
:円運動の半径〔m〕
ローレンツ力 =向心力
であるので、式②、式③から
したがって、電子の円運動の半径は、〔m〕 となります。
[ 練習問題 ]
電流が流れている導体を磁界中に置くと、フレミングの (ア) の法則に従う電磁力を受ける。これは導体中を移動している電子が磁界から力を受け、結果として導体に力が働くと考えられる。
また、強さが一定の一様な磁界中に、磁界の方向と直角に電子が突入した場合は、電子の運動方向と常に (イ) 方向の力を受け、結果として等速 (ウ) 運動をすることになる。このような力を (エ) という。
上記の記述中の (ア)、(イ)、(ウ)、(エ) に当てはまる語句を答えなさい。
[ 解答 ]
磁界中の電流が流れている導体は、「フレミングの左手の法則」に従う電磁力を受ける。
磁界中に電子が突入した場合、電子に働く力はローレンツ力とよばれ、常に電子の運動方向と直角に働き、電子は等速円運動をすることになる。
答 (ア)左手、(イ) 直角、(ウ) 円、(オ) ローレンツ力
※ 磁界中の電子の運動については、電磁力とローレンツ力について及びフレミングの左手の法則について理解しておくことと、等速円運動における向心力の公式を知っておくことがポイントになります。