電験三種の理論 基準ベクトルは、直列回路が電流、並列回路が電圧
交流回路の計算方法を整理する
交流回路はベクトル図を使って考えることが基本です。ベクトル図を理解するためには基準ベクトルがどれかということを知っておくことが重要となります。交流の直列回路と並列回路では、それぞれ基準ベクトルが決まっていますので、マスターにてベクトル図を理解できるようになっておきましょう。
■基準ベクトルとは?
図1のベクトル の角度(ベクトルの角度を偏角といいます。)がθ の方向を向いているとき、このθは基準軸を0°とした角度で表します。
この基準軸上にあるベクトルのことを基準ベクトルといいます。
■直列回路の基準ベクトル、並列回路の基準ベクトル
1、直列の場合
図2(a)のような、 RLC直列回路のベクトル図は図2(b)のようになります。
このとき、基準ベクトルは電流 を取ります。
なぜ電流ベクトルを基準とするのかというと、直列回路の性質である「電圧は抵抗やリアクタンスによって分圧されるが、電流は分けられない」ということから、分けられない電流が基準となります。
2、並列の場合
図3(a)のような RLC並列回路のベクトル図は図3(b)のようになります。
このとき、基準ベクトルは電圧 を取ります。
なぜ電圧ベクトルを基準とするのかというと、並列回路の性質である「電流は抵抗やリアクタンスによって分流されるが、電圧は分けられない」ということから、分けられない電圧が基準となります。
交流回路のベクトル図は「分けられないものを基準とする」と覚えておきましょう。
■例題で覚える
例題1 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
図4はR-L直列回路のベクトル図である。(A)および(B)に入る記号として、正しいものは次のうちどれか。
(1)(A)- (B)-
(2)(A)- (B)-
(3)(A)- (B)-
(4)(A)- (B)-
(5)(A)- (B)-
解き方 答え (3)
R-L直列回路なので、電圧は抵抗R と誘導リアクタンス に分圧されます。
したがって、(A)は誘導リアクタンスの電圧を表す となります。
また、直列回路なので、基準ベクトル(B)は電流 となる。
例題2 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
図5は R-L並列回路のベクトル図である。(A)および(B)に入る記号として、正しいものは次のうちどれか。
(1)(A)- (B)-
(2)(A)- (B)-
(3)(A)- (B)-
(4)(A)- (B)-
(5)(A)- (B)-
解き方 答え (1)
R-L並列回路なので、電流は抵抗 と誘導リアクタンス に分流されます。
したがって、(A)は誘導リアクタンスに流れる電流を表す となります。
また、並列回路なので、基準ベクトル(B)は電圧 となる。
■電験三種での出題例
図6のR-L-C 並列回路において流れる電流が図のとおりであった。回路の合成電流は、いくらか。
答え I=26〔A〕
解き方
並列回路なので、電圧を基準ベクトルとして各電流のベクトルで直角三角形を作り、斜辺の長さを求めます。
出題例のように、交流の直列回路や並列回路の問題ではベクトル図から考えると正解できる問題があります。ベクトル図で考える場合、まず基準ベクトルが電圧か電流のどちらになるかを知っておくと、直角三角形がわかりやすくなります。直角三角形がわかれば、三平方の定理などから計算できます。